マーくんの「本を斬る」のコーナー   VOL.9
1.「痴呆」について考える

 日本も本格的な高齢者社会を迎えております。そこで今回は「痴呆」について考えてみましょう。ところでこの「痴呆」という言葉、どうもイメージが悪いということで、何かもう少し違う言葉に変えるよう国の方で話し合いが行なわれているようです。

2.いかに早く「痴呆」になるか

言葉だけ変えてもイメージは良くなりません。そこでうちの家族の会話を紹介したいと思います。私にはもう70を過ぎた母親がおります。心臓が弱く、発作が起きたらいつ死んでもおかしくありません。しかし、あまりきつい運動をしないかぎり普段は元気です。また、パチンコもたいへん強く、私が大変弱い分、何度も家計を助けております。母親はまだ痴呆になっていません。痴呆になったら私か姉が介護をすることになります。本人は「痴呆になりたくない」と言います。だから毎日痴呆になる前に死ねるよう、神様にお祈りをしているようです(注:私たち家族はキリスト教徒です)。

 そこで少しでも痴呆のイメージを良く?してもらうよう、いつも母親には次のように話しております。「痴呆は決して悪いものではない。なぜなら、世俗のわずらわしさを忘れ、本当の意味で子どもに帰ることができるからである。介護は大変だが、それは周りが困るだけであって、本人は全然平気である」と。こうなりゃ早く痴呆になった方が良いですね。

なーに本人はいいんですよ。周りが困るだけですから。とりあえず母親にはこう説得しているのですが、どうも納得してないようです。

3.養老孟司に注目

今回紹介するのは、養老孟司 著 「カミとヒトの解剖学」 法蔵館 です。養老孟司さんは今度10月に福山に講演に来るそうで、チケットも完売、大変な人気です。やっぱり「バカの壁」が良かったのでしょうか。といっても私は「バカの壁」、読んでないからよくわかりませんが。

今回の本の見所は解剖学の立場から世にいう「心霊現象」を語るところでしょう。例えば臨死体験というのがあって、ヒトは死にそうになった時に「お花畑を見た」とか、「死んだおばあちゃんが川のむこうでこっちにくるなと言った」とかそういう現象です。

これは科学的にいうと、人間の側頭部には海馬といって記憶をつかさどる脳の部分があり、瀕死の状態になると脳の電気信号が放電して側頭部の海馬を刺激し、昔の記憶がよみがえり、こういった映像を見せるそうです。それが証拠に事故か何かで瀕死の状態になった時に、病院のベットで寝ている自分を幽体離脱した自分が天井から見ている、という話がよくありますが、その時見ているのは正面から見ている顔で、後頭部を見たという人はいません。なぜなら、自分の正面から見た顔は鏡でいつも見て記憶にありますが、後頭部は見たことがないためです。「科学でも説明のできない現象がある」とかよくテレビの心霊特集でやってますが、実はほとんど科学で説明できるようです。

 これ以外にもいろいろな心霊現象の説明がありますが、養老さんの良い所は啓蒙的でないところでしょう。わからん奴に教えてあげる的な所がありません。ちょっと面白いのでぜひご一読を。